【短編オリジナル小説】きょうの二階堂さん、きのうのタカナシくん vol.9

「ピグミーマーモセットって知ってる?」と突然授業が終わると二階堂さんは僕に言った。

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「あの、お猿的なやつ?」
「そうね、お猿的なやつね」
「え、今それって必要な情報? 僕がピグミーマーモセットを
知っているかどうかっていうのは?」

二階堂さんはくりっとした瞳をパチクリさせて、
「そうねぇ」と考えた結果「必要だわ、私にとっては」と言った。

であれば僕も真剣に考えて回答しなくてはいけないが、
既に「お猿的なやつ」と言っている段階で知っていることを
伝えてしまっているようなものだと気づく。

「ねぇ、そのピグミーマーモセットがどうしたの?
今の数学の授業と関係ある? テストに出る?」
「関係はないし、テストにも出ないわ。ただちょっと気になったのよ」
「ピグミーマーモセットを僕が知っているかどうか?」
「ええ。というか一般的に知れ渡っている存在なのかどうか。
もしかしたら私しか知らない未知の生物だったらどうしようかと思って」
「ネッシーとかツチノコとかビッグフットみたいな?」
「そう。フライングヒューマノイドとかアルターゴゾ・エルバッキー・ムニューダーとか、
モンゴリアン・デス・ワームみたいな」
「もしかして二階堂さんってそういうの好きな人?」

彼女が今挙げたのはほとんどわからなかったけれど、
恐らく僕が言ったものと並列で言っているとすればUMA(未確認生物)の一種のはず。

「UMAは大好物です」

なんだか言葉遣いも変わったしこれは、ホンモノだ。
いや、待て。こういうケース初めてじゃない。

「もしかして二階堂さん、休みの日とかにぶらぶらしているのって」
「探しているのです。この街の未確認生物を」

これ以上は聞くな。きっと何かしらに巻き込まれる。ともう一人の僕が言っていた。
わかる。その言葉頷ける。だがしかし、もう少し聞いてみたかった。

「で、いた?」
「なにが?」
「UMA」
「…いた」
「へぇ」
「気になる?」
「…若干」

僕の回答が気に入らなかったのか、二階堂さんは目を細めて僕を見た。

「とても気になるかな」
「でしょう」

そう言って二階堂さんは笑いながらカバンから一枚の手書きの地図を取り出した。
どうやらこの街のものらしい。

北は坂の上病院、南は西松寺、東は東庭大学、西は須貝神社が配置していることからして、
結構な距離を彼女は探索していることが分かる。

「タカナシくん、今日の放課後はヒマ?」

僕は薄々気づいていた。
どうも僕は二階堂さんのお誘いは断れないらしい。

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