【短編オリジナル小説】きょうの二階堂さん、きのうのタカナシくん vol.28
あの日に出来た傷は未だに私の体に残っていて、擦り傷ってそんなに治るのが遅いんだっけ、これが年を取ったということなのかしら、と馬鹿なことを考えながら通学する私。 前回はこちら 教室に入ると真っ先に目に飛び込んできたのはタカ…
人生に喜びを、心に感動を。脚本家集団が送るエンタメディア
あの日に出来た傷は未だに私の体に残っていて、擦り傷ってそんなに治るのが遅いんだっけ、これが年を取ったということなのかしら、と馬鹿なことを考えながら通学する私。 前回はこちら 教室に入ると真っ先に目に飛び込んできたのはタカ…
梅雨が明けた。雨に濡れたチョコの入った袋はなんだか上げるには忍びない程度に汚れて、ボロボロになっていた。……雨め。 前回はこちら 登校の準備を一通りして、カバンにチョコをそっと、これ以上包装紙が破れないように静かに入れた…
かき氷を食べて帰宅した私をにたにたと笑いながらソファに座って待っていたのは、本当はお墓で眠っていないといけない明奈だった。 「おかえり」 前回はこちら 「ただいま」とは言ったものの恐らくその笑顔はすべてを見通しているので…
ショートコント「ケガ」 学校で息子にケガをさせられたという川田くんのお父さんが島津くんの家にやってきた。 【キャラ】 川田役:荒巻 島津役:張本 前回はこちら 川田「いやぁね、子供のことは子供の間で解決させるってのは分か…
バイト先のコンビニに出勤すると店長がにやにやして立っていた。朝から気持ちが悪い、もとい気味が悪い。 前回はこちら 結局昨夜は「どっきり」のプラカードを持った神様もしゃもじを持ったヨネスケも乱入してこなかったので、俺には解…
「私の事、好きでしょ」言ってしまった。後悔するのは私じゃないか。 前回はこちら タカナシくんに家まで送り届けられ、当然のことながら誰もいない家。電気をつけて服を着替えて、タオルを頭に巻いて、先程のことを冷静になって考える…
二階堂さんを送り届け、帰宅した僕は一人になって身悶えた。なんて恥ずかしい真似を平然としてしまったのだろうか。 前回はこちら こんなことをするつもりはなかったのにという後悔の嵐が僕の中で吹き荒れる中、窓の外の雨も同調するよ…
蝉の声がうるさくなったが、私の耳は美冬ちゃんの言葉を捉えてしまっていた。「どういう意味?」などと聞いてしまったけれど、どういう意味なのか理解しているつもりだ。そういう卑怯さを自分の行為ながら情けなくなる。 前回はこちら …
ショートコント「新人」 【キャラ】 先輩(ノノミヤ)役:荒巻 新人(タミヤ)役:張本 前回はこちら 先輩「えーと、今日から一緒の職場で仕事をしてくれることになりました、自己紹介」 新人「タミヤです」 先輩「私はノノミヤっ…
「あの、どうやら私、ストーカーされてるみたいなんですよ」と所属タレントが言った場合、事務所の人間はどういう顔をすればいいのだろうか。 前回はこちら 静まり返る社内、テーブルに置かれるティーカップが音を立てる。 「織田」と…
雨の中を走っている自分は一体なんだろうと思う。 前回はこちら 傘は何処に置いてきたんだろう。こんな雨なのに。見知らぬ人が私を見ている気がした。傘を持ちながら、持っていない私を笑っている気がした。 雨。きっとまだやまない。…
雨の中、熊井さんに連れてこられたのは隣の駅のとあるチョコレート屋だった。 前回はこちら 「これもらったらいちころよ」とおかしなことを言う熊井さんに対して、僕は苦笑いで手にしたチョコの入った袋を鞄にしまって外へと出た。まだ…
明奈の墓前に着いた私たちは、お墓の掃除をして、水を墓石にかけて、線香をやった。 手を合わせ、ふと考えてしまった。自分は何を彼女に語りかけようとしているのかと。 前回はこちら 「ねえ、お兄さん」 「うん」 「何を話したんで…
ショートコント「デリバリー」 風邪を引いて寝ている坂本のもとにやってきたピザ屋の配達人。しかし。… 【キャラ】 ピザ屋役:荒巻 坂本役:張本 前回はこちら 坂本「(体温計を見て)ああ、まじか。やっぱ数字見ると熱あることを…
まず目の前で正座をして、俺の言葉を待っている妹に言わねばならないことがある。恋愛相談は友達にするものだ、と。 前回はこちら 「よくあるじゃない、相談した友達が抜け駆けして告ってさ、付き合っちゃったみたいな修羅場」とのたま…
雨か。放課後。窓外で誰の許しを得てざーざー降っているのかは知らないけれども、私は雨が好きだった。 前回はこちら 子供の頃から雨になると傘もささずに家を飛び出したものだ。今はしないけれど。 テストも終わり、タカナシくんから…
梅雨だから雨が降る。僕は雨が嫌いだ。何故か理由もなく悲しい気持ちになるから。 前回はこちら 期末試験はついに始まった。始まったからと言っていつものように手応えがなかったわけじゃない。数日とは言ってもかなり範囲を絞り込んだ…
確かに、今美冬ちゃんが手にしている麦わら帽子は彼女の姉であり元カノの明奈に買ってものだ。申し訳ない程度の大きさのリボンがついている。 前回はこちら 「ねえ、お兄さん。この帽子にまつわるお話してくださいよ。霊園に着くまでに…
ショートコント「ファミレス」 ファミレスでネタを作っている一組の芸人。なおこれはフィクションです。 【キャラ】 荒巻役:荒巻 張本役:張本 前回はこちら ヤングジャンプを読んでいる荒巻。ネタをぶつぶつ独り言を言いながらノ…
あれからどのぐらいの月日が経っただろうか。 お盆の上に湯呑みを3つ載せてやってくる朱乃を見ながら思い返したこと数秒。 ま、大した事じゃない。 前回はこちら 事務所のアルバイトとして朱乃を雇うことになったわけだが、当初はお…
日曜日。私はタカナシくんへの講義内容を考えつつ、担任の境先生の言葉を思い出す。 「二階堂、最近なんだか楽しそうだな」 前回はこちら 職員室に日誌を渡しに行くと、それを受け取った境先生は何気なく言った一言だったが私はそんな…
「ごめんなさい。二階堂さんが何を言っているのかわかりません」 前回はこちら 僕と二階堂さんは期末試験の勉強をすることになり、土曜日学校のある駅から5つ隣の駅にあるカフェに集合した。カバンの中には勿論教科書とノート。 不思…
元カノの墓参りに元カノの妹と来る自分は非常識だったりするだろうか。 前回はこちら 「じゃ、再来週でいかがでしょう?」と美冬ちゃんの提案した日は、あっという間に訪れた。 「へぇ、で、出かけるんだ」と明奈がソファに腰を下ろし…
ショートコント「雨天」 バーベキュー前日。朝倉と橘は翌日のBBQを前にそれぞれの思いを抱えて過ごしていたが。 【キャラ】 朝倉役:荒巻 橘役:張本 前回はこちら 電話をしている橘。 橘「そうそう。でさ、あれ、何の話だっけ…
妹が俺の部屋に入ってくる。なんてテンションが上がる光景だろうか。冗談だ。これは現実。俺達は現実に生きる兄と妹である。どこぞのエロゲーの主人公たちではないのだ。 前回はこちら 「あのさ」 「勉強だっけ?」 「え、うん」 「…
「二階堂さん、今日もデートしてくれないかな?」とタカナシくんは私にしれっと言った。 前回はこちら 「タカナシくんさ」 「うん?」 「あれがデートだと思ったの? 私、デートに誘ったかな?」 「えーと、違った?」 「全然デー…
熊井さんをあとに残して教室に戻ってくると、二階堂さんが女子3人に囲まれて、責められているように見えた。 前回はこちら 「お。噂をすれば彼」 「噂をすれば影でしょ」 「どっちでもいいよ。とにかく関係者が集まっちゃった」 と…
「今度、お姉ちゃんのお墓参りに付き合ってくれませんか?」と美冬ちゃんが言うので、 「ああ、いいよ」と答えてしまったが…… 前回はこちら 明奈のお墓参りは以前一度だけ行ったことがある。 美冬ちゃんにも内緒での墓参りだったし…
今宵の月は満月ですね、と彼女は言う。 僕は其れを見上げて、ええ、満月ですね、と応える。 本当ですか?と彼女は聞く。 僕はもしかしたら多少満月じゃないかもしれない、と応える。 どっちなんですか、と君は僕のことを笑う。 月の…
ひとまずオーディションが終わり、自称原石・朱乃が「どうでしたか?」と言いたそうにそわそわしている。 前回はこちら 織田と薫子はひとまずそれを無視して、貰い物の紅茶を啜る。 朱乃「あの、すみません。紅茶はいいとして、どうだ…
私が登校すると、代わりに教室を出ていくタカナシくんの姿が見えた。 前回はこちら 昨日は彼に悪いことをした。3つも隣の駅にクレープを食べに付き合わせた上、帰り道は一言も会話をすることなく帰ってきたわけだから。 「じゃあ、ま…
「ちょっといいかな?」と登校した僕に近づいてきたクラスメートの熊井さんは眉間に皺を寄せながら聞いてきた。僕はまだおはようすら言っていないというのに。 前回はこちら 「おはよう。熊井さん。どうしたの、そんな怖い顔をして」 …
お店の中は私達の気まずさを反映するように暗く、じめっとして居心地が悪かった。 前回はこちら そんな空気を察してかマスターの十河さんがパンッと手を打った。 「はいっ! 切り替えようか、そろそろ。美冬ちゃん、いつもの作って、…
万引きをしても反省しない、リビングのソファに寝そべってホットアイマスクを使用中の女子が一人。 それが自分の妹であるという点で俺は溜息しか出てこなかった。 前回はこちら 「宿題やったのか」 俺は冷凍ピラフをレンジでチンしな…
いじられるというのはこういうことかと私はタカナシくんの言葉を受けて思った。 前回はこちら 「タカナシくんこそ私にとって未知の生き物だわ」 「それはひどいな。僕のどこが未知なのかな。雪男でもないしネッシーでもないよ僕は」 …
クレープを食べ終わった僕たちは、太陽が向かう方へと足を進めた。 きっと二人ともどこに行くかなんてわからなかったんだと思う。 前回はこちら 「二階堂さん」 「うん?」 「二階堂さんはいつからUMA(未確認生物)を追っている…
あの子が泣いたり、へそを曲げたり、怒ったり、困ったりしたらね、 チョコレートをあげるといいの。と彼女が言っていたのを思い出した。 前回はこちら 美冬ちゃんはカウンターの中、チョコレートをエプロンのポケットにしまおうとした…
ショートコント「風邪」 診察室にいる医師と患者。 どちらも深刻な様子。 【キャラ】 医師:荒巻 患者:張本 前回はこちら 医師は険しい顔でカルテを見ている。 患者は緊張の面持ち。 患者「先生、どうなんでしょうか?」 医師…
原石かもしれないと自分を納得させてその少女を事務所まで連れてきてしまった男。 果たして。…… 前回はこちら 社長の大月薫子がマグカップでコーヒーを啜りながら二人を見ていた。 薫子「誰?」 女「原石です」 薫子「ゲンセキさ…
「甘いもの好きなんだね」とショーケースに並んでいるクレープを見ている私に タカナシくんは言った。 前回はこちら 私の体の35%は甘いもので出来ていると言っても過言ではない。 「タカナシくんはどれが食べたい?」 「僕?」 …