劇団、旗揚げてみる?

もし劇団をこれから旗揚げしようと思っている人がいるのであれば、およしなさいと言ってしまうでしょうね。


【上記は旗揚げ公演「フランスパンは凶器になりますか?」のフライヤーデザイン。デザインは上代暁さん】

私は「演劇」という畑の人間ではありません。本を読むことが好きで、小学生の頃から詩や小説を書くなどはしていましたが、大学では法律を学び(司法試験を目指していました)、演劇サークルがあることは知っていても、引っ込み思案で、人前に出るのを嫌う自分は入ろうとは選択肢がそもそもありませんでした。

そんな私が社会人になってから趣味もないのはどうかと思い、週に4~6本映画を観るという施策を考えて実行し、2年ぐらい経ったころ、脚本を書いたことのない自分に依頼があって、初めて舞台台本を書き下ろしました。それが恐らく2012年の夏の話。

その依頼をしてくれた団体とは細く長く繋がりつつ、ワークショップに通ったり、何故か役者として出演したりなどを繰り返す中、「ああ、人と何かを作るというのはこうも面白いのか」と、また「反応をダイレクトに感じられる舞台のナマモノ(LIVE)感」に魅力を感じ、他に誘える人もいないのに「架空劇団皇帝ケチャップ」を立ち上げました。これが2013年1月31日のお話。

サラリーマンでしたので安定した給料と待遇ではありましたし、そのまま10年20年と生きていくんだろうなと漠然に思っていたのですが、2013年7月、退職を決めて、もう後戻りができない状況に自分を追いやることに。その時思っていたのは、まあ、なんとかなるだろう、と。

劇場ってどう探すの、どこがいいの、どうやって予約するの、…わからないことの多いこと多いこと。恐らく誰かしらに質問すれば答えてくれる人はいたはずなんですけど、1人でとにかくやらないととその頃の自分は思っていましたね。多分その頑固さってのは未だになくなっていない部分ですけど。

【劇場探しのコツ】
1.作品が決まっていて、ある程度の演出が決まっていること。
2.その上でやりやすい劇場を探すこと。なお素舞台を見学できないケースも有るため要注意。
3.予算を決めておく。これがぶれると大赤字となって取り返しがつかなくなります。
4.契約にあたっていつまでにいくら必要になるのかを確認し、問題がなければ契約をする。状況によっては分納が出来る劇場もあるので、恥ずかしく思うことなく聞く事。

オーディションをやるにもどこでやるのか、どうやってやるのか、何を見ればいいのかと全然わからない中で進めていき、シアター風姿花伝(旗揚げ公演を行った劇場です)の稽古場をお借りして実施。その時に出会った役者さんには旗揚げ公演に出演頂きました。もしこの時の自分にアドバイスをするのであれば、ひとつ。オーディション会場はもっと安いところもありますよ、と。

オーディションでお会いした人数としては計2回で5人。これを少ないという人もいるでしょうけれど、人脈もキャリアもない、作品も決まっていないうちの団体に興味を持ってくれた人がこれだけいたってのはありがたいことだと思います。その時の経験があるから、私はたったひとりの応募だったとしてもオーディションはやるべきだと思ったりするわけです。それについては賛否両論ありますけれども。

劇団員もいなければ役者の知り合いもほとんどいない。オーディションで決まったのは1人だけ。こうなると最後の手段がオファーです。舞台を観に行った時に声をかけるでもいいですし、Twitterで話を聞いてもいいと思うのです。やり方は人それぞれで、マナーとかルールとかもあると思いますのでそれを遵守しつつ、まずこちらを知ってもらわないと話になりません。

ここで一言。
「やりたいから、好きだから、他にないからって理由でやるならおよしなさい」

劇団として出演者オーディションをやっているということは最早公演をやるというのが決まっていて、劇場も確保しているのですが、作品がまだ出来ていない。何人かの知り合いに話を聞いてもらって、プロットとまではいきませんが大体の話を作り上げていき、脚本を書き始める。まあ、この時の作品はお蔵入りしたんですけどね。あれから4年が経過しますが、会う度に恨み言を言われます。まあ、いつかやりますよ、金庫に籠城する工場長のお話は。

旗揚げ公演までにこれも運ではありますが、劇団員が一人増え、二人増え、三人増え、私含めて4人となって旗揚げ公演当日を迎えることになります。劇団名も劇団員が自分以外にも加わった段階で「架空」を外して現在の「劇団皇帝ケチャップ」という名乗りに変わりました。

ちなみに名前の由来ですが、私が夜道をとろとろと歩いておりますと、下記のような状況とセリフが頭の中に響いてきたのですが。その状況というのが、

とある国からの貢物に目をキラキラ光らせて飛びついた皇帝陛下。それに対して臣下の1人がこう叫ぶのです。「皇帝陛下。それはケチャップではありません。マヨネーズです」と。略して皇帝ケチャップ。すみません。オチらしいオチもなくて。

旗揚げ公演については収支という意味では大赤字。どぎついなとは思いましたが、劇団としては最初で最後の旗揚げ公演をなんとか乗り切りつつ、既に第2回公演の劇場を押さえているという私なのでした。作品も出来ていないというのに。

これらの反省を踏まえて現在は、
・プロットが出来るまでは劇場の確保は厳禁。
・脚本の第1稿はオーディションまでに書き下ろす。
・公演の意味を考えて企画する。
・収支は赤でもいいなんてのはナンセンス。馬鹿者の言うことだ。

劇団員が増えるってことはそれだけ意見の相違もあります。私は基本的に喧嘩はしたくない人間なので、基本的には一方的に言われるだけの日々ではあります。まあ、どうしても我慢ができないこととか、納得出来ないことには頑固一徹ですけども。

結婚や育児というハッピーなイベントは劇団に訪れる度に組織をどうするか、役割をどうするかと悶々とします。

ここでも一言。
演出、作家だけやりたいという人には向きません。夢もロマンも希望もありませんから、現実としっかり向き合える人のみがやっていける可能性のある仕事ではないでしょうか。って、一言じゃなかったですね。すみません。

楽しいからとか思い出にしたいとか色々な立場の人がいると思いますし、全否定はしません。ただそれでもあなたのゴールってどこですか、ってことだけは明確にしておかないと時間を浪費して、心を消耗するだけになるかもしれません。

なので今、旗揚げを考えている人には一度立ち止まって、深呼吸をしてくださいとアドバイスをしたいと思って今日はこんなことを書いてみました。たまにはいいですよね。

===============ここからは宣伝です!====================
劇団公演としては第7回となりますが、初の短編公演となります。

劇団皇帝ケチャップ第7回本公演
「短編・ソノ先に在る、あるいは居るモノへ」
日程:2018年3月30日~4月1日
劇場:浅草九劇

【第1話『善意と悪意と幾許かの優しさ』】
【第2話『上書き保存される迷える魂』】
【第3話『土の香り』】
【第4話『救済の時』】
各話30分~35分

出演者は現在オファーを進めており、26人中10人の出演が確定しております。オーディションも同時に行う予定で、8月と10月に開催予定です。詳細は下記掲示板に譲ると致しますが、ご興味ある方は掲示板の一番下の追記までお読み頂ければ幸いです。

ご応募、心よりお待ちしております。

http://stage.corich.jp/bbs/41570

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