【短編オリジナル小説】きょうの二階堂さん、きのうのタカナシくん vol.26

「私の事、好きでしょ」言ってしまった。後悔するのは私じゃないか。

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タカナシくんに家まで送り届けられ、当然のことながら誰もいない家。電気をつけて服を着替えて、タオルを頭に巻いて、先程のことを冷静になって考える。恥ずかしいのは彼じゃない、私だ。さて、明日どんな顔をして彼に会えばいいのだろうか。会わす顔がない。アンパンマンだったら「新しい顔よ」と言ってバタコさんが投げてくれるけれど、私は人間だからそうもいかない。

怪我はざっと見たところ大したことはなかった。マキロンで消毒して、メンタームを付けて、大きめの絆創膏を膝と掌に貼った。ああ、先程の私の口にも余計なことを言わないように絆創膏を貼ってやりたい。

こんなとき他に親友と呼べる人間がいたら相談の1つも出来るのだろうけれど、私には……あ、1人いる、かもしれない。だけれども彼女とは高校が違って、全く連絡もしていないから、突然連絡するのも変な気がする。

「元気? いや、なんかね、気になってちょっと連絡してみたんだ」

などとおバカなLINEを送るぐらいなら死んだほうがましだ。ストレートに相談事を書いて送ってみようか。いや、ないないないない。であれば、妙な無料で手に入れたスタンプを送って相手の「どうかした?」を待つとかは。うーん、あざとい。じゃあ、…

と私が悶々として考えていると携帯がぶるっと震えた。

「なにっ!」というツッコミとも悲鳴とも言えないことを口走って画面を見る。噂をすればとはよく言ったものだ。彼女からLINEが来た。恐る恐る起動してみると、妙なスタンプが一つ送られてきていた。以下LINEによる会話となる。

『ん。どうかした?』
『ごめん、なんかいじってたら送っちゃった』
『そう。でも久しぶりじゃない。元気してた?』
『まあまあ。そっちは?』
『ぼちぼち』
『そっかぁ。あのさ、ちょっと今いいかな』
『別にいいけど』
『困ったことになった』
『ん?』
『この私がだよ、恋に落ちました(笑)』

そして続けざまにテンション高い感じのスタンプが連打された。私はそのにくたらしい舞いを披露するキャラクターにイラッとさせられながら、ひとつの考えに行き着いた。

先に言われてしまった、と。

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