【短編オリジナル小説】ハリガネハチマキの明日は来ないと思え vol.11

ショートコント「ケガ」

学校で息子にケガをさせられたという川田くんのお父さんが島津くんの家にやってきた。

【キャラ】
川田役:荒巻
島津役:張本

前回はこちら

川田「いやぁね、子供のことは子供の間で解決させるってのは分かっているんですよ」
島津「はい」
川田「ただそれって程度問題ってないですか?」
島津「でも喧嘩でしょう。鼻血の一つや二つ出ますよ」
川田「そりゃ殴られれば出ますよ。人間ですもの。身体には血が流れているんですもの」
島津「だったら何が問題なんですか?」
川田「骨にヒビとかやりすぎでしょうって話ですよ」
島津「ああ。でも殴ったら骨にヒビぐらい入りますよ。だって人間ですもの」
川田「馬鹿にしてるんですか? え、うちの子供も私もバカにしているんですか?
島津「してませんよ。ただね、どんなに大げさなことを言ったとして喧嘩は喧嘩ですから」
川田「私はね、別に慰謝料がほしいとかそういうわけじゃ」
島津「あ、おいくらですか?」
川田「何がですか?」
島津「慰謝料」
川田「だから、私、ただね息子にちゃんと謝ってほしいんですよ、息子さんに」
島津「謝ったところで何が解決するんですか? 痛かったね、ごめんね。これで何が解決するんですか??」
川田「物事には筋があるんです」
島津「だから慰謝料払うって言ってるじゃないですか」
川田「あなたのその態度も何なんですか。さっきから上から目線で」
島津「息子のことでケガをさせたんだから父親として対応しますということじゃいけないんですか」
川田「これじゃまるで、息子のケガを理由に金をせびりにきたように見えるじゃないですか。違うんですから」
島津「いいですいいです。とりあえず10万ですか、20万ですか。いくら欲しいんですか」
川田「え?」
島津「あとあとトラブルになるのも嫌なんで、ここですぱっと終わらせましょう。でいくら欲しいんですか」
川田「100万とか」
島津「はい?」
川田「あ、違う違う、そうじゃなくて」
島津「100ってあなた」
川田「あ、80、じゃない。あ、50、でもない、えーと、30。そう、30かなぁ」

※川田の直前のセリフは島津の反応を見極めながらころころと意見を変えていく。

島津「わかりました。30ですね。骨のヒビで30か。なかなかふっかけますね。いや、いいですよ。それで終わるんであれば。ええ」
川田「すぐにもらえたりするんですか?」
島津「構いませんよ。じゃあ、お財布取ってきますね」

島津はける。玄関先で待っている川田。そこに島津の息子『タケルくん』が現れる。

川田「あ、タケルくん。こんにちは。え、ちょっと、お父さんに用があってね。うん、あ、うちの子と喧嘩したんだって。…いや、私に謝ってもらっても。うん、うん、うん、そうか。本当は喧嘩したくなかったんだね。でもついかーーっとなって。出来ればね、息子に、明日でいいから謝ってあげてくれるかな。うん、よろしくね。あ、おじさんこのまま帰るけど、お父さんによろしくと伝えておいて。うん。じゃあね」

川田はける。そこに島津戻る。

島津「帰ったか。タケル、なかなかいい演技だったぞ。本当に謝りたいという感じが伝わってきた。よし、今日は母さんも外出してるし、外で飯を食うか。…わかった、今日はハンバーグにしよう」

島津はける。

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