【短編オリジナル小説】ハリガネハチマキの明日は来ないと思え vol.12

ショートコント「宝くじ」

宝くじが当たったものの誰にも言えずに通帳を眺めている原田くん。
そこに小学校からの友人である三崎くんが訪ねてきて。…

【キャラ】
原田役:荒巻
三崎役:張本

前回はこちら

原田、雄叫びをあげながら通帳を隠す。それには触れることなく三崎

三崎「あれ、今日学校は?」
原田「え? ああ、サボった」
三崎「おいおい、原田さん。高校卒業したら怠け癖ついちゃいました?」
原田「そんなんじゃないけどさ」
三崎「だったらなんで家にいるのさ」
原田「それは」

原田(心の声)「言えない。宝くじが当たって外出中に盗まれたらとか考えたら家を出られないとか。ああ、俺、実家ぐらしでよかったぁぁぁ」

三崎「なんか言ったか?」
原田「別に。で、お前何しに来たんだよ」
三崎「ふふふふふ」
原田「気色悪い声出して笑うな」
三崎「何だと思う?」
原田「変なものを拾い食いした」
三崎「ちげぇよ」
原田「じゃあ、」
三崎「時間切れ」
原田「あと一回ぐらいいいだろ」
三崎「じゃあラストチャンスな」
原田「恋を」
三崎「時間切れ」
原田「早いよ」
三崎「正解は」
原田「正解は」
三崎「宝くじが当たったです」
原田「当たってねぇよ!!!」
三崎「はぁ、何でお前にそんなこと言われないといけないんだよ」
原田「え、あ、違う。そんな簡単に当たるものかって話だよ」
三崎「ああ、でも当たったんだよ。いくらかわかるか?」
原田「知らないです」
三崎「何で敬語? まあいいや。おおよそいくらよ。当たったら何か奢ってやってもいいぞ」
原田「じゃ、2万円から」
三崎「オークションじゃねぇから」
原田「じゃあ、1万円」
三崎「正解は、2億円」
原田「そんなに当たってねぇぇから」
三崎「だから、お前に俺の何を知ってて否定するんだよ」
原田「あ、だから、いきなり2億とか言うから現実味ねぇなって話で」
三崎「冗談じゃねぇの」

原田(心の声)「冗談かよ。ふざけんなよ、寿命縮むからやめてくれよぉぉ」

三崎「で、本当は5000円」
原田「現実的。実に現実的だ」
三崎「な」
原田「で、お前いつ帰るの?」
三崎「んだよ、俺今来たばかりだし」
原田「え、でもさ、その金額言いに来たんだろう? だったらもう用は済んだだろ」
三崎「学校サボったんだからヒマだろ。相手してくれよ」
原田「ヒマじゃねぇよ。帰れよ」
三崎「何だよ。つーか、スルーしてたけどさ、お前さっきなんか隠したろ」
原田「別に」
三崎「別にじゃねぇって。その懐に何隠した?」
原田「だから何もだって」

三崎、原田もみ合う。もみ合った結果、通帳を落とす。

三崎「なんだよ、通帳隠すって」
原田「隠すんだよ。預金残高とか友だちにも知られたくないだろ」
三崎「別に」
原田「お前の口座は年中0円だろうが」
三崎「じゃあ、お前いくらあるんだよ」
原田「だからいいって」
三崎「そんな言うんだから大層蓄えちゃってるんだろうな」
原田「そうでもないって。もういいだろ」
三崎「お前、もしかして、…宝くじ当たったんじゃねぇ」
原田「な、なんだ。何でそうなるんだ」
三崎「その反応。まじか。しかも数万円とかじゃない当たりようだ」
原田「そんなもんだよ」
三崎「100万」
原田「何探り入れようとしてんだよ」
三崎「500万」
原田「全然ちげぇし」
三崎「3000万」
原田「…だからちげぇって」
三崎「今何考えた? 何の間だった? まじかよ。え、ちょっとくれよ、なんか奢ってくれよ」
原田「だから当たってねぇっての」
三崎「車、家、豪華ディナー」
原田「たかるな!」
三崎「蟹、トリュフ、フォアグラァァァァァ」
原田「高そうなものを並べるなぁぁぁ」

という喧騒の中、暗転していく。

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