【短編オリジナル小説】探偵は、ファミレスで夜を明かす 第2話(全12話)
誰だって突然姿を消したくなることは在るだろう。私だって誰彼なく突如熱海にでも行ってみようかと思ったりもする。恐らく誰も探しに来てはくれないだろうが。 前回はこちら 私はいつしかウェイトレスの秋川さんがいなくなっていること…
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誰だって突然姿を消したくなることは在るだろう。私だって誰彼なく突如熱海にでも行ってみようかと思ったりもする。恐らく誰も探しに来てはくれないだろうが。 前回はこちら 私はいつしかウェイトレスの秋川さんがいなくなっていること…
ファミレスのいつもの席、が埋まっていたので窓際の二人席に案内されてからかれこれ3時間。 テーブルの上にはメロンソーダが置いてある。 勿論、此れはドリンクバーから空になる度に注いできたもので、3杯目ぐらいになる。どなたかは…
妹はまだ子供だ。ジョナサンでステーキを奢ってやると言ったら、のこのこと誘いに乗ってきた。 前回はこちら 「いらっしゃいませ」というジョナサンの店員に案内された俺たちを今か今かと佐田は待っていた。そして俺たちを振り返ったそ…
妹からのLINEの返信は俺がバイトを終わった時間を見計らったように返ってきた。 「何の用?」大分シンプルなご返信じゃないか、妹よ。 前回はこちら 帰宅した俺は真っ先に言った。 「俺はキューピッドになるつもりだ。わかったか…
芸能マネージャーを始めた頃、この事務所で使っていたのは日産のブルーバードだった。確かあの車種はだいぶ前になくなったと聞く。時代の流れには逆らえないし、その分時間が経過したのだと寂しくも思う。 前回はこちら 後部座席でふて…
一度きりの人生とは言ってもチャンスが訪れる人間と訪れない人間はいる。朱乃にはもしかしたら訪れることはなかったかもしれないチャンスがやってきたのかもしれない。 前回はこちら 俺は給湯室で洗い物をのんびりやっている朱乃に社長…
偶然もいうなれば必然の一つだと誰かが言っていた。 それは逆も然り、必然もまた見ようによっては偶然。 前回はこちら 私とタカナシくんが教室で隣り合い、関係性を改める日が来るなんてことは数か月前には想像すらできていなかった。…
時が経つのは早い。二階堂さんに告白してしまった僕は、その回答を待ち続けていた。もう2週間になる。 前回はこちら 「二階堂さん、ねえ、二階堂さん」 僕は目の前をとことこと歩く彼女を追いかけつつ、話しかけた。 「タカナシくん…
放課後の教室。私は夏目漱石の『こころ』を読みながら、時折夕焼けをちらちらと眺めていた。集中力の欠如、この上ない。 前回はこちら 今から数十分前、熊井さんからLINEが来た。短いメッセージだったけれど、「どういう意味?」と…
放課後、僕は熊井さんに屋上に呼び出された。さっきのことを怒っているんだろう。そして二階堂さんはそのことを怒っているんだ。 前回はこちら 9月になって日が落ちるのが早くなったように感じた。空が暗くなればなるほどに街の明かり…
朱乃を指名してきた映画監督、西條啓二とは一度だけ現場で話をしたことがある。腰の低いいつもにやにやと笑っているような優男だ。俺は嫌いじゃない。 前回はこちら 「いいんじゃないですか」 「無責任な」 「社長が言い出したことじ…
9月。つまりは8月の長い夏休みも終わったことを意味する。 前回はこちら 席替えがあろうがなかろうがそんなことは大したことではなかったのに、いざ席が代わって得体の知れない交流もない女子男子たちに囲まれ、タカナシくんが遠くに…
9月になり、授業も始まり、席替えがあり、僕らに日常が戻ってきた。 前回はこちら 席替え。それは生徒にとっては一大イベントに変わりない。それを楽しみにしている生徒はどれだけいることだろうか。だが、席替えによって寿命を縮める…
ボコボコにされるのが嫌なら金を払えか。嫌な世の中だ、全く。 前回はこちら 俺はその男との電話を早々に終わらせ、ひとまず今危機に直面している輪島くんの事務所に連絡をした。「お宅の役者さん、えらいことになってまっせ」と。する…
駅の近くには神社があり、夏も終わりのこの時期に夏祭りが毎年開催される。子供の頃は父が連れて行ってくれた。今の私はもう子供ではない、いや子供だとしてもそこまで幼いわけでもないから、だから私は1人で出かける。 前回はこちら …
夏休みも残り2日となった日。二階堂さんからLINEが来た。 前回はこちら 『暇だと思うんだけど』という書き出しで始まった二階堂さんのメッセージ。余程彼女も暇を持て余して持て余しきれなくなって連絡を送ってきた様子。僕はあく…
「佐田くんさ、彼女いないよね? 彼氏でもいいけど」と俺は聞いてみた。 前回はこちら 「ちょっとちょっと、決めつけないで下さいよ。僕にだってですねぇ」 「いないだろ」 「紹介でもしてくれるんですか? だったらいないってこと…
夏休みが終わろうとしている。ってことに気づいた朝。それなりに楽しかった。「それなり?」って、いや、去年の数十倍も今年は楽しかった。でもこれで終わりでいいの、私。 前回はこちら 家族で旅行をした記憶は正直言ってないけど、そ…
「宿題なんてこりごりだ」と僕が何度言ったとしても二階堂さんも熊井さんも「OK」とは言ってはくれず、僕の二度と戻っては来ない青春の1ページはただひたすら勉強によって消費されていった。 前回はこちら 気づけばもう夏が終わる。…
「え、行かないの?」と社長の薫子さんが俺が電話を切ってのんびりとスイカを食べ始めたのを見て言った。そう、俺は行かないのだ。 前回はこちら 「え、なんで行かないんですか?」と朱乃までがスイカを食べながら言い始める。もしそれ…
勉強が苦手な人がよく陥ることのひとつに、机に向かっているだけで蕁麻疹が出るとか言い始める学生。タカナシくんがふらふらと立ち上がって出ていくのを見送りながらそんなことを思った。 前回はこちら 私は付箋を握り潰すと、筆箱の中…
図書館に着いた僕たちは冷房による恩恵に浴し、ハンカチで汗を拭った。 前回はこちら 僕は苦手な数学のワークブックを開き、二階堂さんは歴史、熊井さんは英語と全く揃わない感じはなんだろうか。これでは机を一緒にしているだけではな…
監視カメラの映像を個人的欲望に従い全て見ると言い出した大宮店長の肩をがしっと掴み、俺は首を横に振った。 前回はこちら 「なに、一緒に見る?」 「違います。監視カメラの私用とかやめて下さい。本部に報告しますよ」 「脅されて…
夏休み3日目。 僕は宿題を詰め込んだカバンを地面に置いて、まだ来ぬ人々を待った。 前回はこちら 猛暑。猛烈に暑いと書くわけだが、駅の改札を出たところがまだ日陰であるにはあるけど、暑いことに変わりはない。ああ、冬が恋しい。…
あの日に出来た傷は未だに私の体に残っていて、擦り傷ってそんなに治るのが遅いんだっけ、これが年を取ったということなのかしら、と馬鹿なことを考えながら通学する私。 前回はこちら 教室に入ると真っ先に目に飛び込んできたのはタカ…
梅雨が明けた。雨に濡れたチョコの入った袋はなんだか上げるには忍びない程度に汚れて、ボロボロになっていた。……雨め。 前回はこちら 登校の準備を一通りして、カバンにチョコをそっと、これ以上包装紙が破れないように静かに入れた…
バイト先のコンビニに出勤すると店長がにやにやして立っていた。朝から気持ちが悪い、もとい気味が悪い。 前回はこちら 結局昨夜は「どっきり」のプラカードを持った神様もしゃもじを持ったヨネスケも乱入してこなかったので、俺には解…
「私の事、好きでしょ」言ってしまった。後悔するのは私じゃないか。 前回はこちら タカナシくんに家まで送り届けられ、当然のことながら誰もいない家。電気をつけて服を着替えて、タオルを頭に巻いて、先程のことを冷静になって考える…
二階堂さんを送り届け、帰宅した僕は一人になって身悶えた。なんて恥ずかしい真似を平然としてしまったのだろうか。 前回はこちら こんなことをするつもりはなかったのにという後悔の嵐が僕の中で吹き荒れる中、窓の外の雨も同調するよ…
雨の中を走っている自分は一体なんだろうと思う。 前回はこちら 傘は何処に置いてきたんだろう。こんな雨なのに。見知らぬ人が私を見ている気がした。傘を持ちながら、持っていない私を笑っている気がした。 雨。きっとまだやまない。…
雨の中、熊井さんに連れてこられたのは隣の駅のとあるチョコレート屋だった。 前回はこちら 「これもらったらいちころよ」とおかしなことを言う熊井さんに対して、僕は苦笑いで手にしたチョコの入った袋を鞄にしまって外へと出た。まだ…
まず目の前で正座をして、俺の言葉を待っている妹に言わねばならないことがある。恋愛相談は友達にするものだ、と。 前回はこちら 「よくあるじゃない、相談した友達が抜け駆けして告ってさ、付き合っちゃったみたいな修羅場」とのたま…
雨か。放課後。窓外で誰の許しを得てざーざー降っているのかは知らないけれども、私は雨が好きだった。 前回はこちら 子供の頃から雨になると傘もささずに家を飛び出したものだ。今はしないけれど。 テストも終わり、タカナシくんから…
梅雨だから雨が降る。僕は雨が嫌いだ。何故か理由もなく悲しい気持ちになるから。 前回はこちら 期末試験はついに始まった。始まったからと言っていつものように手応えがなかったわけじゃない。数日とは言ってもかなり範囲を絞り込んだ…
日曜日。私はタカナシくんへの講義内容を考えつつ、担任の境先生の言葉を思い出す。 「二階堂、最近なんだか楽しそうだな」 前回はこちら 職員室に日誌を渡しに行くと、それを受け取った境先生は何気なく言った一言だったが私はそんな…
「ごめんなさい。二階堂さんが何を言っているのかわかりません」 前回はこちら 僕と二階堂さんは期末試験の勉強をすることになり、土曜日学校のある駅から5つ隣の駅にあるカフェに集合した。カバンの中には勿論教科書とノート。 不思…
妹が俺の部屋に入ってくる。なんてテンションが上がる光景だろうか。冗談だ。これは現実。俺達は現実に生きる兄と妹である。どこぞのエロゲーの主人公たちではないのだ。 前回はこちら 「あのさ」 「勉強だっけ?」 「え、うん」 「…
「二階堂さん、今日もデートしてくれないかな?」とタカナシくんは私にしれっと言った。 前回はこちら 「タカナシくんさ」 「うん?」 「あれがデートだと思ったの? 私、デートに誘ったかな?」 「えーと、違った?」 「全然デー…
私が登校すると、代わりに教室を出ていくタカナシくんの姿が見えた。 前回はこちら 昨日は彼に悪いことをした。3つも隣の駅にクレープを食べに付き合わせた上、帰り道は一言も会話をすることなく帰ってきたわけだから。 「じゃあ、ま…
「ちょっといいかな?」と登校した僕に近づいてきたクラスメートの熊井さんは眉間に皺を寄せながら聞いてきた。僕はまだおはようすら言っていないというのに。 前回はこちら 「おはよう。熊井さん。どうしたの、そんな怖い顔をして」 …