【短編オリジナル小説】ハリガネハチマキの明日は来ないと思え vol.1

漫才コンビ、ハリガネハチマキのネタ 第一弾を掲載していきます。

二人の紹介はこちら。ハリガネチマキ vol.0 二人の紹介

それでは、どうぞ。

ツッコミの張本
どうも。ハリガネハチマキです。よろしくおねがいします
ボケの荒巻
どっちがハリガネでどっちがハチマキかというのはとてもナンセンスなんでお答えできません
ツッコミの張本
いきなりどうしました?
ボケの荒巻
いやぁ、最近なんですかね、よくからまれるんです
ツッコミの張本
からまれる? 道とかで?
ボケの荒巻
そうそうそう。道でね、こうやってネタの暗記でぶつぶつと諳んじたりしてるわけです
ツッコミの張本
ほうほうほう、で
ボケの荒巻
そしたらですよ。私、相方にネタ覚えてなかったら半殺しにされるからびっくりするぐらいまじめに覚えている私にですよ、『よお、兄ちゃん。金、持ってるか』ってからんでくるんです
ツッコミの張本
えーと、それはかつあげでよろしいですか?
ボケの荒巻
そんなようなもんです
ツッコミの張本
(客席に向かって)どうやらこれはかつあげの話のようです
ボケの荒巻
『飛んでみろよぉ。じゃりじゃり言ってんじゃねぇかよぉ』と飛び跳ねる私に言うんですよ
ツッコミの張本
だいぶ昔の不良漫画に出てきそうな輩ですね。で、お金は渡しちゃうんですか
ボケの荒巻
私だって20を超えた大人ですからね。言ってやりますよ。『諸君、汗水たらして稼ぎなさい』ってね
ツッコミの張本
そしたらなんて?
ボケの荒巻
そしたら、ランドセルを見せて、『俺ら小学生だからさ』って言うんですよ
ツッコミの張本
ははん。小学生にからまれたんですね、うちの相方
ボケの荒巻
最近の小学生は手強いですよ。僕らの時代なんてマキビシを地面に投げたり、ロケット花火を人に向けて飛ばしたりぐらいじゃないですか
ツッコミの張本
それもだいぶな話ですよ
ボケの荒巻
それじゃあ、自分が幼稚園児にからまれた時の話を
ツッコミの張本
もういいです
ボケの荒巻
ありがとうございました
ツッコミの張本
しめないしめない。持ち時間7分なんだから
ボケの荒巻
7分も喋ること覚えられないんですけど
ツッコミの張本
覚えられなかったら後で殴るだけなんで
ボケの荒巻
でしょ。殴るでしょ。怖いんですよ、うちの相方
ツッコミの張本
最近はソロでの仕事のほうが忙しい私達なので
ボケの荒巻
そうそう。練習時間もないので電話で合わせたりってのが多いですよね
ツッコミの張本
そうやって関係が薄くなっていったせいか今では敬語で話す関係にまでなりましたよね
ボケの荒巻
2ヶ月前は『あらちゃん、はりちゃん』の仲だったのにね
ツッコミの張本
もういいわ
ボケの荒巻
ありがとうございました
ツッコミの張本
だから、しめないしめない

ネタを終えて楽屋へ

という形でただただ喋り続けた7分間の地獄が終わっての楽屋。
疲れ果てている二人にごきげんな感じで喋り続けるマネージャー。

マネージャ
あ、またね違う仕事入ってきちゃってね。うちの事務所的にはもう二人に感謝しかない
ツッコミの張本
でもそれってお笑いとは関係ないやつですよね、きっと

というマネージャーと張本の会話を静かに聞いていた荒巻。

ボケの荒巻
僕はね役者の仕事は楽しいですよ。もっと入れてほしいぐらいです
マネージャ
わかってるわかってる。きっと合ってるよ
ツッコミの張本
合ってる?

そこで噛み付いたのは張本だった。

ツッコミの張本
あの、合ってるってのはどういう意味での合ってるでしょうか? 例えばお笑いより合ってるなのか、性格として荒巻に合ってるってことなのか
マネージャ
もちろん性格? だよ。張本くんにも仕事来てるからさ。よろしく頼むよ
ツッコミの張本
ええ、わかってますよ

そう頼み事をして楽屋を出て行くマネージャー。

ボケの荒巻
あのマネージャーになってから仕事増えたよね
ツッコミの張本
でもその分お笑いの仕事から遠ざかってる
ボケの荒巻
うん。気づいてるよ、そんなことは
ツッコミの張本
笑いも愛想笑いぐらいしか取れてない。もっと刺さる間とか掛け合いとかネタとかさ
ボケの荒巻
あるだろうね。練習不足が祟って(たたって)るよ
ツッコミの張本
わかってんじゃん
ボケの荒巻
わかってるさぁ

張本はペットボトルの水を飲みながら思った。
『俺達にはまだ選択するだけの力はない』と。

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