【短編オリジナル小説】探偵は、ファミレスで夜を明かす 第1話(全12話)

ファミレスのいつもの席、が埋まっていたので窓際の二人席に案内されてからかれこれ3時間。
テーブルの上にはメロンソーダが置いてある。

勿論、此れはドリンクバーから空になる度に注いできたもので、3杯目ぐらいになる。どなたかは存じ上げないけれど、ドリンクバーという制度を作った人には感謝の言葉以外見つからない。ありがとうドリンクバー、ありがとうドリンクバーを発明した人、とここで話を終えたらドリンクバー愛好家であるとしか分かってはもらえないだろうからもう少しだけ話をしようと思う。

この世の中には探偵という仕事を生業にする人間がどれだけいるか、正確な数字を答えられる人がどのぐらいいるだろう。私すら答えられない。かく言う私もその1人であり探偵である。昔はよくネコが逃げたから探してくれというような依頼が多く入ってきたが最近はネコ探しはやっていない。そのヒマすら私には与えられていないからだ。その代わりと言っては何だが最近やっていることは人探しだろうか。もう人探しのプロと言っても過言ではないぐらいに経験を積ませてもらっている。

「お客様の中に宮畳いつき様はいらっしゃいますか? 探偵の宮畳いつき様。探偵の」
「はい、私です。なんですか、そう何回も探偵探偵とか個人情報の漏洩もいいところじゃないですか」
「お電話入っております」
「どなたですか?」
「わかりません。名前は聞いても教えてもらえませんでしたので」

ウェイトレスの、ネームプレートには「秋川」と入っていた。その秋川さんは私にさっさと電話に出てくれ、迷惑だという顔を笑顔で隠しながら固定電話に案内した。

「宮畳ですがどなたですか?」
「探偵の宮畳さんでよろしかったでしょうか。探偵の」
「そう何度も探偵探偵とかあなたねぇ」
「お仕事を依頼したい」
「あのね、人の話は聞くものですよ」
「祖父を探して欲しい。金はいくらでも払う」

私はそっと受話器を持つ手を変え、まだかまだかと様子をニコニコ顔でうかがっているウェイトレスをしっしと手で追い払い、「依頼内容、詳しく伺いましょうか」と伝えた。

ようやく探偵物語ぽくなってきたものの、今日はこの辺で終わるとしよう。
ちなみに私のいちばん好きなドリンクはメロンソーダではない!

第2話へと続く。

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