【短編オリジナル小説】君のことは好きになれそうにない 第2話(全12話)
「西原さんってどうにかならないんですか?」と始業間もなくして櫻井くんからメッセが飛んできた。どうにかなるんだったらもうしてるって話だ。 前回はこちら 私は冷静な顔をしながらそのメッセに返す。 「西原さんの企画としてスター…
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「西原さんってどうにかならないんですか?」と始業間もなくして櫻井くんからメッセが飛んできた。どうにかなるんだったらもうしてるって話だ。 前回はこちら 私は冷静な顔をしながらそのメッセに返す。 「西原さんの企画としてスター…
兎にも角にも人というのは相性だと思っているし、第1印象なのだと思う。仕事の上でも、恋愛の上でも。 「どうして私じゃだめなんですか」 「それは質問かい?」 「質問かもしれませんし自問かもしれません。『どうして私じゃだめなん…
誰だって突然姿を消したくなることは在るだろう。私だって誰彼なく突如熱海にでも行ってみようかと思ったりもする。恐らく誰も探しに来てはくれないだろうが。 前回はこちら 私はいつしかウェイトレスの秋川さんがいなくなっていること…
ファミレスのいつもの席、が埋まっていたので窓際の二人席に案内されてからかれこれ3時間。 テーブルの上にはメロンソーダが置いてある。 勿論、此れはドリンクバーから空になる度に注いできたもので、3杯目ぐらいになる。どなたかは…
お疲れ様です。劇団皇帝ケチャップの吉岡です。 ネコヒマや二階堂さんなどの作者をしております。 今日は新作についてある程度まとめていかないといけないなと思いつつ、 あまりにもまとまらない日々が続きました。 そろそろ3月舞台…
妹はまだ子供だ。ジョナサンでステーキを奢ってやると言ったら、のこのこと誘いに乗ってきた。 前回はこちら 「いらっしゃいませ」というジョナサンの店員に案内された俺たちを今か今かと佐田は待っていた。そして俺たちを振り返ったそ…
妹からのLINEの返信は俺がバイトを終わった時間を見計らったように返ってきた。 「何の用?」大分シンプルなご返信じゃないか、妹よ。 前回はこちら 帰宅した俺は真っ先に言った。 「俺はキューピッドになるつもりだ。わかったか…
芸能マネージャーを始めた頃、この事務所で使っていたのは日産のブルーバードだった。確かあの車種はだいぶ前になくなったと聞く。時代の流れには逆らえないし、その分時間が経過したのだと寂しくも思う。 前回はこちら 後部座席でふて…
一度きりの人生とは言ってもチャンスが訪れる人間と訪れない人間はいる。朱乃にはもしかしたら訪れることはなかったかもしれないチャンスがやってきたのかもしれない。 前回はこちら 俺は給湯室で洗い物をのんびりやっている朱乃に社長…
偶然もいうなれば必然の一つだと誰かが言っていた。 それは逆も然り、必然もまた見ようによっては偶然。 前回はこちら 私とタカナシくんが教室で隣り合い、関係性を改める日が来るなんてことは数か月前には想像すらできていなかった。…
時が経つのは早い。二階堂さんに告白してしまった僕は、その回答を待ち続けていた。もう2週間になる。 前回はこちら 「二階堂さん、ねえ、二階堂さん」 僕は目の前をとことこと歩く彼女を追いかけつつ、話しかけた。 「タカナシくん…
電車に乗っていた時から気づいていた。雨が降っていることに。 前回はこちら 車窓をこれ見よがしに叩いた大粒の雨。確かに私はビニール傘を持っていたはずなのだ。いつかどこかのコンビニあるいはどこかのキオスクで買ったものを。しか…
放課後の教室。私は夏目漱石の『こころ』を読みながら、時折夕焼けをちらちらと眺めていた。集中力の欠如、この上ない。 前回はこちら 今から数十分前、熊井さんからLINEが来た。短いメッセージだったけれど、「どういう意味?」と…
放課後、僕は熊井さんに屋上に呼び出された。さっきのことを怒っているんだろう。そして二階堂さんはそのことを怒っているんだ。 前回はこちら 9月になって日が落ちるのが早くなったように感じた。空が暗くなればなるほどに街の明かり…
「話しましょうか」と言われて暫く経ち、ただただ沈黙が続くので私は「コーヒーでも入れようか」と言ったが、彼女は短くこう答えた。「私、これでも死んでるからさ」と。 前回はこちら 墓穴を掘るというのはこういうことを言うんだろう…
告白の回答を今欲しいと年下の女の子からせがまれて、私は「わかった」と答えた。その答えに目の前の少女は納得してくれなかった。「わかった、…ってなんですか?」 前回はこちら 「え、だからその話はわかったってことでわかってもら…
朱乃を指名してきた映画監督、西條啓二とは一度だけ現場で話をしたことがある。腰の低いいつもにやにやと笑っているような優男だ。俺は嫌いじゃない。 前回はこちら 「いいんじゃないですか」 「無責任な」 「社長が言い出したことじ…
9月。つまりは8月の長い夏休みも終わったことを意味する。 前回はこちら 席替えがあろうがなかろうがそんなことは大したことではなかったのに、いざ席が代わって得体の知れない交流もない女子男子たちに囲まれ、タカナシくんが遠くに…
9月になり、授業も始まり、席替えがあり、僕らに日常が戻ってきた。 前回はこちら 席替え。それは生徒にとっては一大イベントに変わりない。それを楽しみにしている生徒はどれだけいることだろうか。だが、席替えによって寿命を縮める…
「元奥様がこんなところで何をされているんですか?」と美冬ちゃんは言った。明らかに喧嘩腰である。 前回はこちら 「こんな所でって言われても、元々私もここに住んでいたからねぇ」と余裕を見せる美津。 その余裕感にイラッとさせら…
とても居づらい。生きた心地がしない。そんなシチュエーションってなかなか経験することはないなと思いながら興味深そうに美冬ちゃんを見ている美津を見て思っていた。 前回はこちら そんなことを冷静に思っているのは余裕がある証拠だ…
ボコボコにされるのが嫌なら金を払えか。嫌な世の中だ、全く。 前回はこちら 俺はその男との電話を早々に終わらせ、ひとまず今危機に直面している輪島くんの事務所に連絡をした。「お宅の役者さん、えらいことになってまっせ」と。する…
駅の近くには神社があり、夏も終わりのこの時期に夏祭りが毎年開催される。子供の頃は父が連れて行ってくれた。今の私はもう子供ではない、いや子供だとしてもそこまで幼いわけでもないから、だから私は1人で出かける。 前回はこちら …
夏休みも残り2日となった日。二階堂さんからLINEが来た。 前回はこちら 『暇だと思うんだけど』という書き出しで始まった二階堂さんのメッセージ。余程彼女も暇を持て余して持て余しきれなくなって連絡を送ってきた様子。僕はあく…
転勤の話が会社であった日の帰り、家に帰宅すると明奈は出てこなかった。恐らく客が来ていたからだろう。「あの、何してるの、ここで?」とソファに座っている元妻の美津に言った。 前回はこちら 「チョット待って、ほんとに何事、これ…
「佐田くんさ、彼女いないよね? 彼氏でもいいけど」と俺は聞いてみた。 前回はこちら 「ちょっとちょっと、決めつけないで下さいよ。僕にだってですねぇ」 「いないだろ」 「紹介でもしてくれるんですか? だったらいないってこと…
夏休みが終わろうとしている。ってことに気づいた朝。それなりに楽しかった。「それなり?」って、いや、去年の数十倍も今年は楽しかった。でもこれで終わりでいいの、私。 前回はこちら 家族で旅行をした記憶は正直言ってないけど、そ…
「宿題なんてこりごりだ」と僕が何度言ったとしても二階堂さんも熊井さんも「OK」とは言ってはくれず、僕の二度と戻っては来ない青春の1ページはただひたすら勉強によって消費されていった。 前回はこちら 気づけばもう夏が終わる。…
私は出社すると上司の安西さんに手招きされて会議室に。はて、何かやらかしただろうか。 前回はこちら 「転勤ですか!?」 「しーーー。まだ決まったわけじゃないんだから。ここ防音じゃないから」 「にしても突然過ぎるなと思いまし…
「え、行かないの?」と社長の薫子さんが俺が電話を切ってのんびりとスイカを食べ始めたのを見て言った。そう、俺は行かないのだ。 前回はこちら 「え、なんで行かないんですか?」と朱乃までがスイカを食べながら言い始める。もしそれ…
勉強が苦手な人がよく陥ることのひとつに、机に向かっているだけで蕁麻疹が出るとか言い始める学生。タカナシくんがふらふらと立ち上がって出ていくのを見送りながらそんなことを思った。 前回はこちら 私は付箋を握り潰すと、筆箱の中…
図書館に着いた僕たちは冷房による恩恵に浴し、ハンカチで汗を拭った。 前回はこちら 僕は苦手な数学のワークブックを開き、二階堂さんは歴史、熊井さんは英語と全く揃わない感じはなんだろうか。これでは机を一緒にしているだけではな…
「どうして私だけじゃダメなの?」と言った明奈は今、目の前でソファに腰掛け、2時間ドラマの再放送を見ている。のんきなものだ。 前回はこちら 「それって面白い?」 「これ? 別に、面白いから見ているわけじゃないわ」 「じゃあ…
監視カメラの映像を個人的欲望に従い全て見ると言い出した大宮店長の肩をがしっと掴み、俺は首を横に振った。 前回はこちら 「なに、一緒に見る?」 「違います。監視カメラの私用とかやめて下さい。本部に報告しますよ」 「脅されて…
家で飼っているネコのハミルトンとベンジャミンに餌をやって家を出た私は、電車に乗って待ち合わせをしている駅へと向かった。きっとあの子は彼のことを…… 前回はこちら ガタンガタンと規則正しいリズムを刻んで電車が進む。私はぽつ…
夏休み3日目。 僕は宿題を詰め込んだカバンを地面に置いて、まだ来ぬ人々を待った。 前回はこちら 猛暑。猛烈に暑いと書くわけだが、駅の改札を出たところがまだ日陰であるにはあるけど、暑いことに変わりはない。ああ、冬が恋しい。…
「私からサヨナラって言ってあげようか?」と明奈は言った。その思い出は全く色褪せずに私の中に在り続けた。 前回はこちら その時、明奈と住んでいた場所は今とは異なるわけだが、彼女はソファに座って窓の外の暗闇を見つめてそう言っ…
俺は木刀を杖のようにして身体をもたせながら、「なにもしないで下さいね」と言って帰って行く所属女優の莉緒を見送った。 前回はこちら 「いいんですか、帰しちゃって」という朱乃はコーヒーカップを片付けながら言った。 「いいんで…
あの日に出来た傷は未だに私の体に残っていて、擦り傷ってそんなに治るのが遅いんだっけ、これが年を取ったということなのかしら、と馬鹿なことを考えながら通学する私。 前回はこちら 教室に入ると真っ先に目に飛び込んできたのはタカ…
梅雨が明けた。雨に濡れたチョコの入った袋はなんだか上げるには忍びない程度に汚れて、ボロボロになっていた。……雨め。 前回はこちら 登校の準備を一通りして、カバンにチョコをそっと、これ以上包装紙が破れないように静かに入れた…