告白の回答を今欲しいと年下の女の子からせがまれて、私は「わかった」と答えた。その答えに目の前の少女は納得してくれなかった。「わかった、…ってなんですか?」
「え、だからその話はわかったってことでわかってもらえたと思うんだけれど」
「その事務的な言葉の短さと温度感に私は全く納得出来ておりませんけど」
「これ以上何を言えば満足なんだろう」
「わかってるでしょう。大人なんだから。ちゃんとそういうところはして下さい」
私は眉毛を掻きつつ、参ったなぁと思って視線を外すと、ゆっくりと明奈が部屋に入ってくるのが見えた。人がいる所に出てくるのは初めてのことだ。
「どうかしたんですか」と美冬ちゃんは私の視線が何かを捉えているのを感じて、同じ方向を見ていた。ただ彼女には何も見えていないことだけがわかった。もし死んだ姉がそこにいるのが見えたら平気ではいられないはずだから。
「聞いたよ。血は争えないってことなのかな、やっぱり」と明奈は言った。私はまるで金縛りにでも遭ったかのように動くことはおろか声すら出せなかった。「金縛りって本当に出来るんだねぇ。いやはや」などと言ってくるが目は笑っていなかった。
「私を捨てて、他の女性と結婚して、私は死んで、今度は妹と一緒になる、か。貴方の人生、面白いね。ウケる」
「あの、私、ずっと待ちなんですけど」とこの状況を知る由もない美冬ちゃんは言ってくる。見えない、知らないというのは幸福なことだ。
「妹の幸せはお姉ちゃんの幸せなんだって思ってるんだけど、こればっかりは両手上げて祝える気になれないんだよね。貴方、本当に私の妹と結婚するの?」
嫌な汗が背中を流れていき、明奈に見つめられる中、私は突如解かれた金縛りによって体のバランスを失い、その場に座り込んでしまった。
「大丈夫ですか? そんなに緊張することでもないですよね」と美冬ちゃんが言ってくるのをぼうっとする頭で聞きながら、「ごめん。今度会った時にちゃんとするから、ちゃんと言うからさ、今日は、ごめん」
玄関で不満顔を見せつつも、なんとか美冬ちゃんを帰らせ、私は再び居間に戻ってきた。ソファにはだらっと横になって笑みを浮かべている明奈がいた。彼女ともちゃんとしないといけない、いけなかったんだと激しく反省と後悔の念が私の胸中に渦巻いていた。
「さてと、お話、しましょうか?」と彼女は言った。