【短編オリジナル小説】猫も大概ヒマじゃない vol.15
かき氷を食べて帰宅した私をにたにたと笑いながらソファに座って待っていたのは、本当はお墓で眠っていないといけない明奈だった。 「おかえり」 前回はこちら 「ただいま」とは言ったものの恐らくその笑顔はすべてを見通しているので…
人生に喜びを、心に感動を。脚本家集団が送るエンタメディア
かき氷を食べて帰宅した私をにたにたと笑いながらソファに座って待っていたのは、本当はお墓で眠っていないといけない明奈だった。 「おかえり」 前回はこちら 「ただいま」とは言ったものの恐らくその笑顔はすべてを見通しているので…
バイト先のコンビニに出勤すると店長がにやにやして立っていた。朝から気持ちが悪い、もとい気味が悪い。 前回はこちら 結局昨夜は「どっきり」のプラカードを持った神様もしゃもじを持ったヨネスケも乱入してこなかったので、俺には解…
「私の事、好きでしょ」言ってしまった。後悔するのは私じゃないか。 前回はこちら タカナシくんに家まで送り届けられ、当然のことながら誰もいない家。電気をつけて服を着替えて、タオルを頭に巻いて、先程のことを冷静になって考える…
二階堂さんを送り届け、帰宅した僕は一人になって身悶えた。なんて恥ずかしい真似を平然としてしまったのだろうか。 前回はこちら こんなことをするつもりはなかったのにという後悔の嵐が僕の中で吹き荒れる中、窓の外の雨も同調するよ…
蝉の声がうるさくなったが、私の耳は美冬ちゃんの言葉を捉えてしまっていた。「どういう意味?」などと聞いてしまったけれど、どういう意味なのか理解しているつもりだ。そういう卑怯さを自分の行為ながら情けなくなる。 前回はこちら …
「あの、どうやら私、ストーカーされてるみたいなんですよ」と所属タレントが言った場合、事務所の人間はどういう顔をすればいいのだろうか。 前回はこちら 静まり返る社内、テーブルに置かれるティーカップが音を立てる。 「織田」と…
雨の中を走っている自分は一体なんだろうと思う。 前回はこちら 傘は何処に置いてきたんだろう。こんな雨なのに。見知らぬ人が私を見ている気がした。傘を持ちながら、持っていない私を笑っている気がした。 雨。きっとまだやまない。…
雨の中、熊井さんに連れてこられたのは隣の駅のとあるチョコレート屋だった。 前回はこちら 「これもらったらいちころよ」とおかしなことを言う熊井さんに対して、僕は苦笑いで手にしたチョコの入った袋を鞄にしまって外へと出た。まだ…
明奈の墓前に着いた私たちは、お墓の掃除をして、水を墓石にかけて、線香をやった。 手を合わせ、ふと考えてしまった。自分は何を彼女に語りかけようとしているのかと。 前回はこちら 「ねえ、お兄さん」 「うん」 「何を話したんで…
まず目の前で正座をして、俺の言葉を待っている妹に言わねばならないことがある。恋愛相談は友達にするものだ、と。 前回はこちら 「よくあるじゃない、相談した友達が抜け駆けして告ってさ、付き合っちゃったみたいな修羅場」とのたま…
雨か。放課後。窓外で誰の許しを得てざーざー降っているのかは知らないけれども、私は雨が好きだった。 前回はこちら 子供の頃から雨になると傘もささずに家を飛び出したものだ。今はしないけれど。 テストも終わり、タカナシくんから…
梅雨だから雨が降る。僕は雨が嫌いだ。何故か理由もなく悲しい気持ちになるから。 前回はこちら 期末試験はついに始まった。始まったからと言っていつものように手応えがなかったわけじゃない。数日とは言ってもかなり範囲を絞り込んだ…
確かに、今美冬ちゃんが手にしている麦わら帽子は彼女の姉であり元カノの明奈に買ってものだ。申し訳ない程度の大きさのリボンがついている。 前回はこちら 「ねえ、お兄さん。この帽子にまつわるお話してくださいよ。霊園に着くまでに…
ショートコント「ファミレス」 ファミレスでネタを作っている一組の芸人。なおこれはフィクションです。 【キャラ】 荒巻役:荒巻 張本役:張本 前回はこちら ヤングジャンプを読んでいる荒巻。ネタをぶつぶつ独り言を言いながらノ…
あれからどのぐらいの月日が経っただろうか。 お盆の上に湯呑みを3つ載せてやってくる朱乃を見ながら思い返したこと数秒。 ま、大した事じゃない。 前回はこちら 事務所のアルバイトとして朱乃を雇うことになったわけだが、当初はお…
日曜日。私はタカナシくんへの講義内容を考えつつ、担任の境先生の言葉を思い出す。 「二階堂、最近なんだか楽しそうだな」 前回はこちら 職員室に日誌を渡しに行くと、それを受け取った境先生は何気なく言った一言だったが私はそんな…
元カノの墓参りに元カノの妹と来る自分は非常識だったりするだろうか。 前回はこちら 「じゃ、再来週でいかがでしょう?」と美冬ちゃんの提案した日は、あっという間に訪れた。 「へぇ、で、出かけるんだ」と明奈がソファに腰を下ろし…
妹が俺の部屋に入ってくる。なんてテンションが上がる光景だろうか。冗談だ。これは現実。俺達は現実に生きる兄と妹である。どこぞのエロゲーの主人公たちではないのだ。 前回はこちら 「あのさ」 「勉強だっけ?」 「え、うん」 「…
「二階堂さん、今日もデートしてくれないかな?」とタカナシくんは私にしれっと言った。 前回はこちら 「タカナシくんさ」 「うん?」 「あれがデートだと思ったの? 私、デートに誘ったかな?」 「えーと、違った?」 「全然デー…
熊井さんをあとに残して教室に戻ってくると、二階堂さんが女子3人に囲まれて、責められているように見えた。 前回はこちら 「お。噂をすれば彼」 「噂をすれば影でしょ」 「どっちでもいいよ。とにかく関係者が集まっちゃった」 と…
「今度、お姉ちゃんのお墓参りに付き合ってくれませんか?」と美冬ちゃんが言うので、 「ああ、いいよ」と答えてしまったが…… 前回はこちら 明奈のお墓参りは以前一度だけ行ったことがある。 美冬ちゃんにも内緒での墓参りだったし…
朝。寝ぼけ眼で食卓に来るとコーヒーカップが置かれている。 ああ、タイミングよく妻が出してくれていたのかと思いつつ、一口啜る。 妻が台所から顔を出したので「おはよう」と声をかけるが彼女の顔は曇る。その視線の先には僕が持って…
ひとまずオーディションが終わり、自称原石・朱乃が「どうでしたか?」と言いたそうにそわそわしている。 前回はこちら 織田と薫子はひとまずそれを無視して、貰い物の紅茶を啜る。 朱乃「あの、すみません。紅茶はいいとして、どうだ…
私が登校すると、代わりに教室を出ていくタカナシくんの姿が見えた。 前回はこちら 昨日は彼に悪いことをした。3つも隣の駅にクレープを食べに付き合わせた上、帰り道は一言も会話をすることなく帰ってきたわけだから。 「じゃあ、ま…
「ちょっといいかな?」と登校した僕に近づいてきたクラスメートの熊井さんは眉間に皺を寄せながら聞いてきた。僕はまだおはようすら言っていないというのに。 前回はこちら 「おはよう。熊井さん。どうしたの、そんな怖い顔をして」 …
お店の中は私達の気まずさを反映するように暗く、じめっとして居心地が悪かった。 前回はこちら そんな空気を察してかマスターの十河さんがパンッと手を打った。 「はいっ! 切り替えようか、そろそろ。美冬ちゃん、いつもの作って、…
万引きをしても反省しない、リビングのソファに寝そべってホットアイマスクを使用中の女子が一人。 それが自分の妹であるという点で俺は溜息しか出てこなかった。 前回はこちら 「宿題やったのか」 俺は冷凍ピラフをレンジでチンしな…
いじられるというのはこういうことかと私はタカナシくんの言葉を受けて思った。 前回はこちら 「タカナシくんこそ私にとって未知の生き物だわ」 「それはひどいな。僕のどこが未知なのかな。雪男でもないしネッシーでもないよ僕は」 …
クレープを食べ終わった僕たちは、太陽が向かう方へと足を進めた。 きっと二人ともどこに行くかなんてわからなかったんだと思う。 前回はこちら 「二階堂さん」 「うん?」 「二階堂さんはいつからUMA(未確認生物)を追っている…
あの子が泣いたり、へそを曲げたり、怒ったり、困ったりしたらね、 チョコレートをあげるといいの。と彼女が言っていたのを思い出した。 前回はこちら 美冬ちゃんはカウンターの中、チョコレートをエプロンのポケットにしまおうとした…
原石かもしれないと自分を納得させてその少女を事務所まで連れてきてしまった男。 果たして。…… 前回はこちら 社長の大月薫子がマグカップでコーヒーを啜りながら二人を見ていた。 薫子「誰?」 女「原石です」 薫子「ゲンセキさ…
「甘いもの好きなんだね」とショーケースに並んでいるクレープを見ている私に タカナシくんは言った。 前回はこちら 私の体の35%は甘いもので出来ていると言っても過言ではない。 「タカナシくんはどれが食べたい?」 「僕?」 …
前を歩く二階堂さんはとても速かった。 追いつくのがやっとの僕だった。 前回はこちら 「二階堂さん、速いよ。運動部じゃないんだから」 「何を悠長なことを言っているの。夕方はすぐに夜になってしまうわ」 二階堂さんは明らかにテ…
私とBar竹馬之友のマスター、十河さんが話をしていると、 入口の扉が開いて美冬ちゃんが入ってきた。 前回はこちら 「お疲れ様です」 「お疲れ」 という十河さんと美冬ちゃんの挨拶があり、私は彼女を見遣る。 彼女はマスクをし…
その日帰宅すると妹の七海は何事もなかったかのように振る舞っていた。 「お兄ちゃん、お帰り」 前回はこちら 「ただいま」 とラフな部屋着に着替えてソファに座っている彼女に言った俺だったが、 あまりにも何事もなかった感が出て…
帰宅部というのは放課後は部活をするでもなく家に帰る学生のことを言うらしい。 となると私はそれには当たらないと思われる。 かくして私と急遽参加となったタカナシくんは放課後、 未確認生物を探しに学校を飛び出した。 前回はこち…
「ピグミーマーモセットって知ってる?」と突然授業が終わると二階堂さんは僕に言った。 前回はこちら 「あの、お猿的なやつ?」 「そうね、お猿的なやつね」 「え、今それって必要な情報? 僕がピグミーマーモセットを 知っている…
スーパーのレジは複数人体制で、列によっては若干早い遅いがあって、 自分が並んでいる列の進みがいいと、『あ、今日自分はついているかも』とか 思ったりするプチ占いみたいなことをやってしまう。 今日はと言えば、どうやらあまりラ…
ショートコント「渋滞」 全く前方の車は動く気配がしない。イライラが募る運転をしている夫と、 ポップコーンを食べ続けている妻という設定。 夫:張本 妻:荒巻 前回はこちら ハンドルを指でノックしている夫。 ポップコーンを食…
人にノートを貸すというのは裸を見られるのとは違うけれど、やはり恥ずかしいものだったりする。 前回はこちら 数学のノートを貸してほしいんだけど、と昨日の授業の終わりにタカナシくんに言われた私は まさに机の中にしまおうとして…