【短編オリジナル小説】きょうの二階堂さん、きのうのタカナシくん vol.42(最終話)
偶然もいうなれば必然の一つだと誰かが言っていた。 それは逆も然り、必然もまた見ようによっては偶然。 前回はこちら 私とタカナシくんが教室で隣り合い、関係性を改める日が来るなんてことは数か月前には想像すらできていなかった。…
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偶然もいうなれば必然の一つだと誰かが言っていた。 それは逆も然り、必然もまた見ようによっては偶然。 前回はこちら 私とタカナシくんが教室で隣り合い、関係性を改める日が来るなんてことは数か月前には想像すらできていなかった。…
時が経つのは早い。二階堂さんに告白してしまった僕は、その回答を待ち続けていた。もう2週間になる。 前回はこちら 「二階堂さん、ねえ、二階堂さん」 僕は目の前をとことこと歩く彼女を追いかけつつ、話しかけた。 「タカナシくん…
放課後の教室。私は夏目漱石の『こころ』を読みながら、時折夕焼けをちらちらと眺めていた。集中力の欠如、この上ない。 前回はこちら 今から数十分前、熊井さんからLINEが来た。短いメッセージだったけれど、「どういう意味?」と…
放課後、僕は熊井さんに屋上に呼び出された。さっきのことを怒っているんだろう。そして二階堂さんはそのことを怒っているんだ。 前回はこちら 9月になって日が落ちるのが早くなったように感じた。空が暗くなればなるほどに街の明かり…
9月。つまりは8月の長い夏休みも終わったことを意味する。 前回はこちら 席替えがあろうがなかろうがそんなことは大したことではなかったのに、いざ席が代わって得体の知れない交流もない女子男子たちに囲まれ、タカナシくんが遠くに…
9月になり、授業も始まり、席替えがあり、僕らに日常が戻ってきた。 前回はこちら 席替え。それは生徒にとっては一大イベントに変わりない。それを楽しみにしている生徒はどれだけいることだろうか。だが、席替えによって寿命を縮める…
駅の近くには神社があり、夏も終わりのこの時期に夏祭りが毎年開催される。子供の頃は父が連れて行ってくれた。今の私はもう子供ではない、いや子供だとしてもそこまで幼いわけでもないから、だから私は1人で出かける。 前回はこちら …
夏休みも残り2日となった日。二階堂さんからLINEが来た。 前回はこちら 『暇だと思うんだけど』という書き出しで始まった二階堂さんのメッセージ。余程彼女も暇を持て余して持て余しきれなくなって連絡を送ってきた様子。僕はあく…
夏休みが終わろうとしている。ってことに気づいた朝。それなりに楽しかった。「それなり?」って、いや、去年の数十倍も今年は楽しかった。でもこれで終わりでいいの、私。 前回はこちら 家族で旅行をした記憶は正直言ってないけど、そ…
「宿題なんてこりごりだ」と僕が何度言ったとしても二階堂さんも熊井さんも「OK」とは言ってはくれず、僕の二度と戻っては来ない青春の1ページはただひたすら勉強によって消費されていった。 前回はこちら 気づけばもう夏が終わる。…
勉強が苦手な人がよく陥ることのひとつに、机に向かっているだけで蕁麻疹が出るとか言い始める学生。タカナシくんがふらふらと立ち上がって出ていくのを見送りながらそんなことを思った。 前回はこちら 私は付箋を握り潰すと、筆箱の中…
図書館に着いた僕たちは冷房による恩恵に浴し、ハンカチで汗を拭った。 前回はこちら 僕は苦手な数学のワークブックを開き、二階堂さんは歴史、熊井さんは英語と全く揃わない感じはなんだろうか。これでは机を一緒にしているだけではな…
家で飼っているネコのハミルトンとベンジャミンに餌をやって家を出た私は、電車に乗って待ち合わせをしている駅へと向かった。きっとあの子は彼のことを…… 前回はこちら ガタンガタンと規則正しいリズムを刻んで電車が進む。私はぽつ…
夏休み3日目。 僕は宿題を詰め込んだカバンを地面に置いて、まだ来ぬ人々を待った。 前回はこちら 猛暑。猛烈に暑いと書くわけだが、駅の改札を出たところがまだ日陰であるにはあるけど、暑いことに変わりはない。ああ、冬が恋しい。…
あの日に出来た傷は未だに私の体に残っていて、擦り傷ってそんなに治るのが遅いんだっけ、これが年を取ったということなのかしら、と馬鹿なことを考えながら通学する私。 前回はこちら 教室に入ると真っ先に目に飛び込んできたのはタカ…
梅雨が明けた。雨に濡れたチョコの入った袋はなんだか上げるには忍びない程度に汚れて、ボロボロになっていた。……雨め。 前回はこちら 登校の準備を一通りして、カバンにチョコをそっと、これ以上包装紙が破れないように静かに入れた…
「私の事、好きでしょ」言ってしまった。後悔するのは私じゃないか。 前回はこちら タカナシくんに家まで送り届けられ、当然のことながら誰もいない家。電気をつけて服を着替えて、タオルを頭に巻いて、先程のことを冷静になって考える…
二階堂さんを送り届け、帰宅した僕は一人になって身悶えた。なんて恥ずかしい真似を平然としてしまったのだろうか。 前回はこちら こんなことをするつもりはなかったのにという後悔の嵐が僕の中で吹き荒れる中、窓の外の雨も同調するよ…
雨の中を走っている自分は一体なんだろうと思う。 前回はこちら 傘は何処に置いてきたんだろう。こんな雨なのに。見知らぬ人が私を見ている気がした。傘を持ちながら、持っていない私を笑っている気がした。 雨。きっとまだやまない。…
雨の中、熊井さんに連れてこられたのは隣の駅のとあるチョコレート屋だった。 前回はこちら 「これもらったらいちころよ」とおかしなことを言う熊井さんに対して、僕は苦笑いで手にしたチョコの入った袋を鞄にしまって外へと出た。まだ…
雨か。放課後。窓外で誰の許しを得てざーざー降っているのかは知らないけれども、私は雨が好きだった。 前回はこちら 子供の頃から雨になると傘もささずに家を飛び出したものだ。今はしないけれど。 テストも終わり、タカナシくんから…
梅雨だから雨が降る。僕は雨が嫌いだ。何故か理由もなく悲しい気持ちになるから。 前回はこちら 期末試験はついに始まった。始まったからと言っていつものように手応えがなかったわけじゃない。数日とは言ってもかなり範囲を絞り込んだ…
日曜日。私はタカナシくんへの講義内容を考えつつ、担任の境先生の言葉を思い出す。 「二階堂、最近なんだか楽しそうだな」 前回はこちら 職員室に日誌を渡しに行くと、それを受け取った境先生は何気なく言った一言だったが私はそんな…
「ごめんなさい。二階堂さんが何を言っているのかわかりません」 前回はこちら 僕と二階堂さんは期末試験の勉強をすることになり、土曜日学校のある駅から5つ隣の駅にあるカフェに集合した。カバンの中には勿論教科書とノート。 不思…
「二階堂さん、今日もデートしてくれないかな?」とタカナシくんは私にしれっと言った。 前回はこちら 「タカナシくんさ」 「うん?」 「あれがデートだと思ったの? 私、デートに誘ったかな?」 「えーと、違った?」 「全然デー…
熊井さんをあとに残して教室に戻ってくると、二階堂さんが女子3人に囲まれて、責められているように見えた。 前回はこちら 「お。噂をすれば彼」 「噂をすれば影でしょ」 「どっちでもいいよ。とにかく関係者が集まっちゃった」 と…
私が登校すると、代わりに教室を出ていくタカナシくんの姿が見えた。 前回はこちら 昨日は彼に悪いことをした。3つも隣の駅にクレープを食べに付き合わせた上、帰り道は一言も会話をすることなく帰ってきたわけだから。 「じゃあ、ま…
「ちょっといいかな?」と登校した僕に近づいてきたクラスメートの熊井さんは眉間に皺を寄せながら聞いてきた。僕はまだおはようすら言っていないというのに。 前回はこちら 「おはよう。熊井さん。どうしたの、そんな怖い顔をして」 …
いじられるというのはこういうことかと私はタカナシくんの言葉を受けて思った。 前回はこちら 「タカナシくんこそ私にとって未知の生き物だわ」 「それはひどいな。僕のどこが未知なのかな。雪男でもないしネッシーでもないよ僕は」 …
クレープを食べ終わった僕たちは、太陽が向かう方へと足を進めた。 きっと二人ともどこに行くかなんてわからなかったんだと思う。 前回はこちら 「二階堂さん」 「うん?」 「二階堂さんはいつからUMA(未確認生物)を追っている…
「甘いもの好きなんだね」とショーケースに並んでいるクレープを見ている私に タカナシくんは言った。 前回はこちら 私の体の35%は甘いもので出来ていると言っても過言ではない。 「タカナシくんはどれが食べたい?」 「僕?」 …
前を歩く二階堂さんはとても速かった。 追いつくのがやっとの僕だった。 前回はこちら 「二階堂さん、速いよ。運動部じゃないんだから」 「何を悠長なことを言っているの。夕方はすぐに夜になってしまうわ」 二階堂さんは明らかにテ…
帰宅部というのは放課後は部活をするでもなく家に帰る学生のことを言うらしい。 となると私はそれには当たらないと思われる。 かくして私と急遽参加となったタカナシくんは放課後、 未確認生物を探しに学校を飛び出した。 前回はこち…
「ピグミーマーモセットって知ってる?」と突然授業が終わると二階堂さんは僕に言った。 前回はこちら 「あの、お猿的なやつ?」 「そうね、お猿的なやつね」 「え、今それって必要な情報? 僕がピグミーマーモセットを 知っている…
人にノートを貸すというのは裸を見られるのとは違うけれど、やはり恥ずかしいものだったりする。 前回はこちら 数学のノートを貸してほしいんだけど、と昨日の授業の終わりにタカナシくんに言われた私は まさに机の中にしまおうとして…
僕は勉強ができない。中でも数学というのは苦手すぎて笑えるほどだ。 なので僕は二階堂さんにノートを借りて帰ることになった。 前回はこちら 想像通りのきれいな文字と数字、几帳面な図が描かれている。 まさしく二階堂ワールドが展…
放課後、タカナシくんは私の指示に従って帰宅せず教室に残ってくれた。 日直の熊井さんまでが残ったのは予想外だったけど。 前回はこちら 「心を開くにはどうすればいいと思う?」 とタカナシくんは言った。 「積極的に話しかける。…
二階堂さんは今日も凛としていた。 次の授業の準備もせずに。 前回はこちら 「ねえタカナシくん」 一瞬自分の名前を二階堂さんが呼んでいることに全く気づかなかった僕。 「無視されてるのかしら、タカナシくんに」 という声で漸く…
寂れた町だよね。街っていうか町って感じだよね、 って同級生が話しているのを不図私は思い出した。 わからないわけじゃないけど、ここで生まれてここで育った私としては、 なんだかそれって自分自身の故郷というかアイデンティティを…
休みの日に商店街をプラプラしていると、うっかり僕は二階堂さんに出会ってしまった。 寂れた感じのシャッター商店街とまではいかないけれど 活気があるような場所でもない。 出来れば二階堂さんの休日はバレエを見に行くとか、 楽団…